今回は、囲碁の格言の一つである「切り違い(キリチガイ)一方ノビよ」について解説します。
この格言は、
- 自分の要石(相手を切っている石)が取られないようにする
- 相手の要石(味方を切っている石)を取る
ということを目的にした格言で、この二点を意識して打っていくことが大事です。
これらを意識していると、「どこをどうノビたら良いのか」や「ノビではなくアタリをする」という判断がしやすくなります。
今回の記事では、
- 自分の弱い石を一方ノビる
- 取りたい陣地を意識して一方ノビる
- 取れると判断してアタリする
という3つのケースについてまとめました。
石が切り違ったときの「判断材料」にしていただければと思います!
関連記事: 【囲碁の格言・ことわざを図解!】初心者・級位者におすすめの3選
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切り違いとは?
まずは、「切り違い(キリチガイ)」とは何なのかを解説しますね。
シンプルな例で切り違いを学んでいきましょう。
黒の星に対して白が、
白1とツケてきたとします。
ちょっとびっくりしますが、取りたい陣地を意識しながら対応しましょう。
今回は、隅の陣地を取りたいと考えて打っていってみます。
黒が隅を守ろうと思ったら…
黒2のハネですね。
白がこれ以上隅に進んでこないようにしています。
こんなイメージです。
そしてここで、
白3と切ってきた場合、
この形が「切り違い」という形になります。
お互いに相手の石を切り合っている(切り違っている)のですね。
「石数が同じ時の切り違い」は一方ノビる
さて、この形が「切り違い一方ノビよ」の典型的な例です。
でも、黒番でノビてくださいと言われても、どの石をどうノビたら良いのかよく分かりませんね。
この図のように、石数が2対2の切り違いの場合、
A と B の二つの石を見て、どちらが弱そうなのかを判断しましょう。
そして、弱そうな石を一方ノビましょう。
黒 A と黒 B のどちらが弱そうなのかというと…
黒 A でしょうか。
隅の石の方が取られやすいので、この図の場合は黒 B よりも黒 A の方が弱い石になります。
なので、
黒 A をどちらかにのばしましょう。
実戦ではもっと石が混んでいて、弱い石の判断が難しいことが多々あると思いますが、
「どの石が弱そうかな」と判断すること自体が大切なのです。
自分なりに判断してみることで上達していきますし、そこが楽しいですよ。
結果にこだわらずに、色々試してみて下さいね。
さて、
そうは言っても格言は便利です。
こういう時にアタリをするのは、相手の石を一方的に強くしてしまい、良くありません。
石数が同じ時の切り違いでは、アタリは良くない
ついついアタリをしたくなりますが、
たとえば黒4とアタリをすると、
相手は白5とノビますね。
すると、
相手の石の呼吸点が増えてしまいます。
白を強くしてしまっているのですね。
同じ調子で、
黒6とアタリをすると、
やはり白7と逃げられて、白を強くしてしまいます。
黒には断点があるので、
黒8と守るくらいになりますが、
次の白番で、
白9と打たれて、黒一子が取られてしまいます。
白9はゲタですね。
この結果は、
「黒 A は助かったけれど、黒 B は取られた」
という状況です。
黒 B はもともといた「星」の石ですので、取られてしまっては黒が失敗なのです。
ということで、
弱い石を一方ノビて、相手の要石を取る
石数が同じ時の切り違いでは、
どちらが弱い石なのかを考えて、(今回は黒 A の方が弱い)
黒4とノビで対応します!(黒4’もOKです。)
これで黒が有利な状況になります。
どうしてそう言えるのかというと…
黒4と打つ事で、どちらかの白×を取れる状態になっているからです。
黒は、
A と B の二点を両にらみ(見合い)にしているのですね。
このように二つ以上の狙いがあれば、次が白番であったとしても、どちらかの白×を取れるということになります。
つまり、
白が5と逃げていったとしても、
黒6で白×を取れます。(シチョウで取れていますね。)
また、白5で、
こちらの白を逃げたとしても、
次の黒番で、
黒6と打ち、今度はこちらの白×を取る事ができます。
白が7、9と抵抗しても、黒10まで、白を包囲して取る事ができます。(黒〇が取られないことも確認してみて下さい。)
OKでしょうか。
白3の切り違いに対して、黒4と弱い方の石を一方ノビることで、
A と B を見合いにして、どちらかの白を取る事ができるのでした。
切ってきた相手の石を取れるということは、黒全体がつながるわけですから「白の無理な切りを咎めた」ということになりますね。
少し話はそれますが、白1、3のような、黒を切っている石を「要石(かなめいし)」や「種石(たねいし)」と言い、これらを取れれば有利になることが多いです。
味方を分断してきている「要石」が取れれば、「その分断は失敗ですよー」ということが言えるので、有利になりやすいのですね。
戦いが始まった時には、どの石とどの石が切り違っていて、どの石を取れたら一番嬉しいのかを考えてみて下さい。
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取りたい陣地を意識して、切り違い一方ノビる
では、次の例に行きましょう。
今度は、「星の大ゲイマジマリ」があったとします。
黒△は大ゲイマで連絡を取って、隅の陣地を囲んでいますね。
このつながりを意識することが大切です。
黒が大ゲイマで守っているところに白が、
先ほどと同じように、白1、3と切り違いをしてきたとしましょう。
そして、
先ほどと同様に、黒4のノビで対応してみます。
部分的には、どちらかの白を取れるので黒が有利なはずです。
しかし今回は、
白5、7などと打たれて、黒△の大ゲイマがバラバラになってしまいます。
このあと、
黒8と打てば白×を取れますが、
白9などと打たれて黒△が孤立してしまいますね。
なので、
白1、3の切り違いに対しては、
「黒△同士はつながっていますよ」
という気持ちで、
黒4と打つ手が大事になります。
ノビの方向が大切なのですね。
黒4と打つ事によって、黒△の大ゲイマをしっかりとつなげつつ、隅の陣地を囲んでいます。
黒△の構えの当初の目的が達成できそうですね。
このあとの展開としては、
白5のアタリには黒6とノビます。
白×を自然と取れそうな雰囲気になってきました。
白もしようがないので、
白7、9などが相場の対応になります。
この結果は、
白×の要石を取りつつ、取りたかった陣地をしっかりと取る事ができています。
このように、当初の目的を意識することが大事なのですね。
取れそうな時はアタリして取る
さて、もう一つのケースを見てみましょう。
今度は、黒△の小ゲイマジマリがあったとします。
このようにしっかりと連絡して、隅の陣地を守っていますね。
この黒に対して、
これまでと同じように、白1、3と切り違いをしてきたとします。
次の黒はどうしましょう?
ここで考えることは、やはり「要石」を取る事です。
白1か白3を取れればOKなのですね。
そして、黒△のケイマ同士のつながりを考えると、白3が取りやすそうですし、取りたいです。
ということで…
手っ取り早いのは黒4です。
「切り違い一方ノビよ」の格言には当てはまりませんが、白×を取れていればOKです。
仮に白が逃げようとしてきても、黒8までシチョウで取れていますね。
OKでしょうか。
まとめ
今回は三種類の切り違いへの応対を解説しました。
まとめます。
弱い石を一方ノビる
黒が星にいて、
白1、3と切り違ってきたら、黒4の「弱い石を一方ノビ」がGoodです。
石数的には2対2で互角に近い形勢ですので、弱い石に注意をしながら戦う事が大切です。
そして、
黒4のノビを打つことによって、A と B を見合いにし、どちらかの要石を取る事ができるのでした。
取りたい陣地を意識して一方ノビる
星の大ゲイマジマリに、
白1、3と切り違いをしてきた場合には、大ゲイマのつながりと、取りたい陣地を意識して黒4のノビが好手です。
ここは、もともと黒が陣地として囲もうとしていた場所なので、その陣地を守るという意識で打ちましょう。
石数も多いので、「陣地を気にしながら戦えるくらい余裕がある」とも言えますね。
黒8まで、白3の要石を取りつつ、陣地を守ることができました。
取れる時はアタリして取ってOK!
星の小ゲイマジマリに対して白が、
白1、3と切り違いをしてきた場合は、黒4でOKです。
格言通りではありませんが、要石を取りつつ、陣地が守れていれば良いのです。
白3のキリは無理な手でしたね。
どうでしょうか。
これまでの話で、「切り違い一方ノビよ」という格言は、
- 自分の要石(相手を切っている石)が取られないようにする
- 相手の要石(味方を切っている石)を取る
という目的を達成するための格言であることが分かります。
なので、「切れているからノビておこう」というよりかは、「自分の要石を助けて、相手の要石を取れたら良いな」というイメージで戦うことが大切ですね。
是非意識してみて下さい!
※参考※
あまり良い名前ではありませんが、覚えやすいですね。
たとえば、
白×がカス石になります。
黒を分断していませんね。
黒としては、白×に逃げ出されてもOKなのです。
白1と逃げていったとしても…
放っておいて黒2などと打っても良いですし、
黒2と打って、白地(白の根拠)ができないように攻めてもOKです。
このあとの攻め方の一例としては、
こんな感じです。
黒14まで、白がカス石を逃げている間に、
黒地がたくさんできましたね。
対する白は、石は助かりましたがほとんど陣地ができていません。
また、黒を分断しているわけでもありません。
ということで、
白は白×を逃げない方が良いですし、黒も白×を一手かけて取る必要が無いのです。(分断されないので緊急ではない)
是非、「要石」と「カス石」の違いも意識して対局してみて下さい!
では、最後まで読んでくださりどうもありがとうございました。
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