こんにちは!
囲碁インストラクターの佐藤です。
今回は代表的な囲碁の格言・ことわざを図解していきます。
格言やことわざは先人たちからのアドバイスであり、表現を端的にしているので例外も多いのですが、囲碁の考え方がとても参考になります。
この記事では、実戦で役立つ(例外が比較的少ない)ものを3つ、初心者・級位者の方に向けて解説していきますね。
対局の時に意識してみていただければ幸いです!
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格言・ことわざ①「敵の急所は我が急所」
1つ目のオススメは「敵の急所は我が急所(てきのきゅうしょはわがきゅうしょ)」です。
この格言は、
「相手の打ちたそうなところに打つ手は良い手であることが多いですよ」という意味です。
例えば、
このような状況があったとしましょう。
黒が白に囲まれていますね。こういう時に黒は「眼(め)」を二つ作ることが大事です。
関連記事:
【囲碁入門⑦】「生き死にの原理」死活の本を読む前に要チェック!
黒が二眼(にがん)を作るためには…
黒1が良い手です。これで、黒1の左右に眼ができて黒は取られなくなりますね。
黒1は「黒が生きるための急所」と言えます。
さて、
今度は、先ほどの図で白番だったとしましょう。
白の立場で考えると、黒を囲んで封鎖しているという状況です。
つまり、黒に二眼を作らせなければ黒一団を取ることができるという状況なのです。
そして、
具体的にどこに打てば良いのかを考えるにあたって「敵の急所は我が急所」という格言がぴったり当てはまります。
黒の打ちたい場所に白が打つということですね。
白1が良い手になります。
これで黒は二眼を作ることができなくなりました。(黒が白1を取っても一眼しかできません!)
黒の打ちたい場所に先着した白1が好手だったということですね。
また、白1は「三目中手」という死活の手筋であり、「敵の急所は我が急所」という考え方によって生み出された手なのです。
関連記事: 【囲碁入門⑪】「中手(なかで)」死活に重要な中手とは?
このように、相手の打ちたそうな場所を考えて、その場所に先着する手は良い手であることが多いですので、是非、実戦で「敵の急所は我が急所」という格言を意識してみて下さい!
格言・ことわざ②「大場よりも急場」
2つ目のオススメは「大場よりも急場(おおばよりもきゅうば)」です。
これは、「弱い石を放っておくのは良くないですよ」という意味の格言で、先の「相手の急所は我が急所」と同様に一局を通じて使える格言になります。
大場とは
大場とは「陣地を大きく得できる手や場所」のことです。
重要なのはその局面において陣地を大きく得できるということで、どの段階でも大場は存在します。
例えば、布石の段階ではシマリやヒラキ、カカリなどが大場にあたることが多いです。
また、終盤のヨセの段階では二線のハネツギやサルスベリなどが大場となることが多いです。
その時々で最も陣地を得できそうな手や場所を大場というのですね。
関連記事①: 【囲碁のヒラキの意味と使い方】辺への打ち方の基本を初級・中級の方向けに解説!
関連記事②: 【囲碁のサルスベリ入門】知らないと止められない!ヨセの手筋「サルスベリ」
急場とは
急場とは「弱い石に関する手や場所」のことです。
弱い石というのは、生きるために必要な陣地(根拠)をまだ持っていない石のことで、自分の弱い石を守ったり、相手の弱い石を攻めたりするのが急場になります。
大場よりも急場の例
例えば、
仮にこのような局面があって黒番だったとします。
右辺や上辺に二間ビラキなどのヒラキを打つ余地が残っていて、右辺や上辺はこの局面における「大場」です。
さて、ヒラキなどを打つ余地があるなあということを確認していただいた上で、妙に目立つ右上にも注目しましょう。
右上の形は格言①「敵の急所は我が急所」でお出しした例題と同じ形です。
つまり、右上の黒一団はまだ生きていない弱い石であり、右上の黒の生き死にに関する手はこの局面での「急場」になります。
そして、
大場よりも急場を優先しましょうというのが「大場よりも急場」という格言の意味ですので、次の黒の一手は、
黒1が大事な一手になるのですね。
これで、黒一団が取られることはありません。
反対に黒1を打たずに、
黒1などの大場へ先行してしまうと、白2の三目中手(急場)を打たれて黒一団が取られてしまいます。
右上一帯が全て白地になって、黒一団は終局時にアゲハマ(死に石)になってしまうので、白2の地点は大変大きいのです。
関連記事: 【囲碁入門⑧】「死に石について」取られている石ってどういうこと?
確かに「右上が取られても他の場所で頑張る!」という考えで黒1などの大場に打つのは一つの判断であり、妙案になることもあるのですが、基本的にはこの図ほどの規模の黒石の生き死には無視しない方が良いです。
というのが「大場よりも急場」という格言なのですね。
実戦では「どこかに弱い石(まだ生きていない石)はいないかなあ」と、上空からパトロールをするかのように碁盤全体を眺めてみることが大事になります。
参考にしていただければ幸いです!
格言・ことわざ③「ツケにはハネよ」「ハネにはノビよ」
最後は、「ツケにはハネよ」と「ハネにはノビよ」という接近戦の一連の流れに関する格言です。
当てはまらない局面(例外)も多い格言ではあるのですが、「接近戦で打つ手が分からなくなった」という時に一つの指針となりますのでご紹介します。
ツケとは
まずは、ツケとは何か?についてです。
例えば、
この黒石に対して、
白1がツケです。
他にもA~Cも全てツケという囲碁用語になります。
黒石から出ている線の内の一つを占める手がツケなのですね。(さらに詳しく言うと、白1のように「単独(一子)」で黒の線上に打っている手がツケと呼ばれます。)
ツケにはハネよ
「ツケにはハネよ」という格言は、「ツケに対してはハネで応じてみましょう」という意味の格言です。
例えば先ほどの図の白1のツケに対して、
黒2や黒Aがハネです。
このように、相手の石に接しながら味方の石を斜めに置く手のことを「ハネ」と言います。
ツケに対してハネを打つことで次に相手へのアタリを狙うことができるというのがポイントです。(例えば、黒2と打った上でさらに黒Aに打てたら白一子がアタリになりますね。)
是非、「次にアタリしちゃいますよ」という意識でハネを打ってみていただければと思います。
これが「ツケにはハネよ」という格言です。
※ハネに対して切り違いをされた場合については、下の関連記事をご参考下さい。
関連記事: 【囲碁の切り違い(キリチガイ)一方ノビよ】「要石」についても解説
ハネにはノビよ
「ハネにはノビよ」という格言は、「ハネに対して、味方の石の手数をのばしましょう」という意味の格言です。
例えば、先ほどの図の黒2に対して、
白3や白Aがノビです。
このように打つことで、
白3の手数が延びてアタリをされづらくなるのです。
ツケ⇒ハネ
という手順でハネを打たれた場合、ツケの石の手数は必ず2手以下になっていますので、「アタリをされないようにノビを打っておきましょう」というのが「ハネにはノビよ」の意味になります。
このようなツケやハネのシチュエーションに限らず、お互いの石の手数を意識することが接近戦の際にとても重要ですので、考え方を参考にしていただければ幸いです。
ノビにはつなごう
さて、一連の流れの最後に「ノビにはつなごう」というスローガンも付け足しておこうと思います。
これは正式な格言ではないのですが、
ツケ⇒ハネ⇒ノビ
という攻防のあとには高確率で断点ができていますので、「その断点をしっかりと守りましょう」という本サイト(いごすけや)独自の標語です。
つまり、前の図の白3のあと、
黒4などのツナギを打って断点を守っておくのが良い手になります。
この図の黒4は「カタツギ」という守り方で、
手数が多くなるのが大きなメリットです。感触としては「ノビ」と似ています。
このように打っておくことで、アタリをされて取られる可能性がガクッと下がるのです。
是非、「手数を延ばしながら断点を守っているんだ!」という意識でカタツギを試してみて下さい。
ツケのあとの定石
前図黒4のツナギのあとは、
例えば白5の「二間ビラキ」が良く打たれる手です。
このようにヒラキを打っておくことで根拠(生きるための陣地)ができていくのですね。
陣地の分布としては、
こんな感じです。
白は隅の黒をツケで攻撃しながら、最終的に上辺に拠点を構えました。
対する黒は隅の陣地を守りながら右辺への発展性を得ました。
白1~白5はツケのあとの定石の一つと言っても良い模範的な攻防なのです。
是非、一手一手の意味を格言と照らし合わせながら並べてみて下さい!
関連記事: 【囲碁のツケ・ハネ・ノビ】格言の意味がよく分かる!接近戦の仕組みを徹底解説
まとめ
本記事では、数ある囲碁格言・ことわざの中から実戦で使いやすいものを3つに絞ってご紹介しました。
その3つを以下にまとめておきますね。
- 敵の急所は我が急所
- 大場よりも急場
- ツケにはハネよ、ハネにはノビよ、ノビにはつなごう
格言やことわざは数え切れないほどたくさんあって、時には矛盾していたり局面に当てはまらなかったりしますが、囲碁の重要な考え方が詰まったフレーズたちですので、参考にしていただければ幸いです。
では、最後まで読んでくださりどうもありがとうございました!
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